クレーン車は、目的の場に次々と資材を引用していく。
やがて資材は引用されたものからひとつの建築物へと変わり、その場に自らの存在を誇示する。
自らが引用物の集合体であることも忘れて。
ちなみにクレーン車のクレーンの裏側には、これ以上直接的な表現は見あたらぬほど見事に簡潔な言葉が大きな字で書かれている。
『吊り荷の下に入るな』
(2017年2月|東京都世田谷区・下北沢)
文・写真|栂正行
当記事は書籍『引用と借景』に関連した旅と風景、印象を著者の許可を得て公開しています。
記事内容は紙の書籍内には含まれていません。
『引用と借景 文学・美術・映像・音楽と旅の想到』(栂正行著)
アートを追って人はどこに到着するのか。
鉄道を乗り継ぎながら思索の糸で縦横無尽にアートを連結。
各地のパブリック・アート、美術館・博物館・文学館などを訪ねつつ、
文学・美術・映像・音楽を参照、
モノ・ことば・こころの関係を問いながら、
作品に見られる「引用」と「借景」の営みをたどるアートの意味論。