西行の歌碑、芭蕉の句碑 -『創造と模倣』の旅②

その日、金谷から山道の麓の茶店にタクシー。
そこから旧東海道に入ろうと、店で道を確認すると、連日の雨で裏手の道からは登れないという。
約40分遠回りし、旧東海道に入る。まずは上りの急勾配。
少し登っては休み、登っては休み。
やがて道は平坦になり、一安心し、風に吹かれていると、西行の歌碑に至った。
西行が高齢をおして東国への旅に出た時の歌。
遥か遠くに浜松のアクトタワーが見え、あとは茶畑。
さらに進むと、今度は芭蕉の句碑。芭蕉は西行の旅を模倣。
しかし同じ地を文字にして新たな認識を創造。
とかくするうちに、道は急な下り坂。
日坂の宿に到着。
高低差の中、歌碑や句碑を堪能しての三時間の歩行。
芭蕉は馬に跨っていた様子だが。

西行歌碑(静岡県・日坂)

西行歌碑
(静岡県・日坂)
文・写真|栂正行

『創造と模倣 移動芸術論』(栂正行著)
『創造と模倣 移動芸術論』(栂正行著)

ノーベル文学賞受賞者カズオ・イシグロ、
V・S・ナイポールの作品世界に投錨し
創造の航路をつぶさに描き出す。
創造と模倣の関係を幅広く問う論考。

当記事は書籍『創造と模倣』に関連した旅と風景、印象を著者の許可を得て公開しています。
記事内容は紙の書籍内には含まれていません。