貨車とコンテナ -『創造と模倣』の旅④

東からの新幹線で浜松駅を過ぎるとすぐのところ、北側の窓から多数のコンテナが見える。
生まれたときからコンテナのあった世代は、コンテナの出現以前に無数の貨車が操車場で入れ替えられていたことを知らない。
たとえばさいたま副都心、スーパーアリーナのあたり。
かつては操車場があり、北から電気機関車に引かれてきた貨車が蒸気機関車に組み合えられ、新たな編成の一部となって別の電気機関車に引かれ南に旅立った。
貨車とは? という世代もいよう。貨車とは運ぶものに合わせて作られた車両で、タンク車などは現在も活躍している。
ほかに冷蔵車、無蓋車、家畜車、編成の最後にくる車掌車もあった。多様性の極みだ。
次の画像は群馬県上信電鉄のとある駅にあった貨車(撮影:著者)

群馬県上信電鉄のとある駅にあった貨車

これなどはコンテナに向かう途上のつくりという趣で、なかにほどんどなんでも積める。
やがてコンテナの時代が来た。
個々の個性的な貨車が家畜車のように自然に対し具体的に密着しようという創造行為の産物であったのに対し、コンテナの中身はさっぱりわからない。
どのコンテナも複製アートのよう。抽象の度合が加速する。
そしてコンテナ船は今日もこぼれんばかりのコンテナを満載し港を出入りする。

コンテナ船と富士山

コンテナ船と富士山 写真|長澤一徳

文|栂正行

『創造と模倣 移動芸術論』(栂正行著)
『創造と模倣 移動芸術論』(栂正行著)

ノーベル文学賞受賞者カズオ・イシグロ、
V・S・ナイポールの作品世界に投錨し
創造の航路をつぶさに描き出す。
創造と模倣の関係を幅広く問う論考。

当記事は書籍『創造と模倣』に関連した旅と風景、印象を著者の許可を得て公開しています。
記事内容は紙の書籍内には含まれていません。

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