西行の歌碑、芭蕉の句碑 -『創造と模倣』の旅②

その日、金谷から山道の麓の茶店にタクシー。
そこから旧東海道に入ろうと、店で道を確認すると、連日の雨で裏手の道からは登れないという。
約40分遠回りし、旧東海道に入る。まずは上りの急勾配。
少し登っては休み、登っては休み。
やがて道は平坦になり、一安心し、風に吹かれていると、西行の歌碑に至った。
西行が高齢をおして東国への旅に出た時の歌。
遥か遠くに浜松のアクトタワーが見え、あとは茶畑。
さらに進むと、今度は芭蕉の句碑。芭蕉は西行の旅を模倣。
しかし同じ地を文字にして新たな認識を創造。
とかくするうちに、道は急な下り坂。
日坂の宿に到着。
高低差の中、歌碑や句碑を堪能しての三時間の歩行。
芭蕉は馬に跨っていた様子だが。

西行歌碑(静岡県・日坂)

西行歌碑
(静岡県・日坂)
文・写真|栂正行

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起点としての80年代 -『創造と模倣』の旅①

2019年早春、静岡県静岡市で現代美術を歴史化するかの企画展が二つ並んだ。
ひとつは静岡駅前の交通至便の極み、静岡市美術館の1980年代を俯瞰する企画(「起点しての80年代」)。
1980年代があって21世紀の今がある、あるいは今は1980年代をとっくに凌駕しているという議論。
これに静岡県立美術館の1968年のアートに焦点を当てた企画展(「1968年 激動の時代の芸術」)を加えると、1968年、1980年代、今の三つの時が絡み合う。
アートの世界に見る新旧論争的な語彙で語れる状況(『創造と模倣』84頁「古くからあるアポリア」参照)を、東京から、名古屋から1時間のところで理解できる。

中原浩大の「金椀」(静岡市美術館「起点しての80年代」)

中原浩大の「金椀」。
器を風呂釜以上の大きさに拡大し、
黄金の茶室ならぬ黄金の器に仕上げた、
目を釘付けにする作品。
奥は「夢殿」。
(静岡市美術館)
文・写真|栂正行

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