車内に様々な広告をと呼びかける広告。
広告を車内に引用するという解釈も成り立つ。
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『引用と借景』を巡るもう一つの旅の想到
フォイルズの絵はがき(引用と借景の旅⑥)
『わたしを離さないで』の主人公キャシーとその寄宿学校の生徒たちならいざ知らず、高齢になっても手放せず箱にしまいっぱなしというモノがある。
キャシーたちが閉ざされた空間の中、モノを箱に大事にしまいこんでおくというのはよくわかるが、むかし旅した土地の絵葉書が衣更えの折などに、中身の分からぬ箱から突然出てきて、しばらくはその旅の行程すら思い起こせないというのが多くの人々の経験ではなかろうか。
この鮮やかな赤いカードは、ロンドン、ソーホーにある大書店フォイルズの無料の絵葉書。
イギリスの書店の内部は、さまざまな色の本が平済みにされカラフルなキルトのよう。
ポスター、ポストカード、講演会案内、バーゲンの案内とすべてけばけばしいものの、それも寒い国ならではのこと、全体としてはバランスがよく取れている。
クレーン車(引用と借景の旅⑤)
クレーン車は、目的の場に次々と資材を引用していく。
やがて資材は引用されたものからひとつの建築物へと変わり、その場に自らの存在を誇示する。
自らが引用物の集合体であることも忘れて。
ちなみにクレーン車のクレーンの裏側には、これ以上直接的な表現は見あたらぬほど見事に簡潔な言葉が大きな字で書かれている。
『吊り荷の下に入るな』
(2017年2月|東京都世田谷区・下北沢)