2022年10月5日、中日新聞の「みんなの本」で『継承と共有 所有と交換のかたわらで』の書評が出ました。書評子は本書の最後まできちんと読んでいただき、率直な感想を述べた内容が、本書の内容をよりよく表していると思います。興味を持たれた方は、ぜひご一読ください。

『継承と共有 所有と交換のかたわらで』、9月から静岡・ひばりブックスさんにてお取り扱いしております。ぜひ足を運んでいただき、本をご覧ください。
本書のなかで、ひばりブックスの店長さんと著者が本のことについて会話を交わす箇所がありまして、そのご縁で本を置いていただけることになりました。感謝申しあげます。
*この記事をお読みになってお店に行かれた際、既に売り切れていたらごめんなさい。ぜひ、ひばりブックスさんに注文ください。意外と早く届きますよ。
カズオ・イシグロの作品のなかで比較的わかりやすく、推理小説仕立ての秀作『わたしたちが孤児だったころ』は、そこからドイルのシャーロック・ホームズものにも、シャーロット・ブロンテの『ジェイン・エア』にもつながっていく広がりのある小説だ。
読者は主人公バンクスの養女として冷静な女性に育ったジェニファーの背後に、これまた思慮深い女性に成長したジェイン・エアの影を見る。
ジェニファーのモノに対する考え方については、『創造と模倣』のなか、引用を踏まえてゆっくりと論じた(64頁「気の利いた科白」〜)。
この勢いで、作品に投影した著名な文人のモノ観のについての考察を探したところ、シェイクスピア全作品の翻訳者松岡和子の『「もの」で読む入門シェイクスピア』に行き着いた。
シェイクスピアに詳しくなくとも、『ヴェニスの商人』の「肉一ポンド」や『オセロー』の「ハンカチ」くらいは何とか思いつくが、『ロメオとジュリエット』の「インクと紙」と来たあたりで考察はとまってしまいかねない。
ところが本書はシェイクスピア全作品の「もの」に網羅的な視線を注いでいる。面白い。
そして同じモノでも、ルネサンス世界と21世紀とでは、感覚に大きな開きがあるとわかる。
モノに込められた微妙な意味合いが舞台で活きるシェイクスピア世界。
そこから産業革命を経て、19世紀ディケンズ世界のモノの横溢。
二つの大戦を経て、ついに20世紀末から21世紀にかけて、モノが時としてもはや執着の対象ではなくなったイシグロの世界が出現した。
東からの新幹線で浜松駅を過ぎるとすぐのところ、北側の窓から多数のコンテナが見える。
生まれたときからコンテナのあった世代は、コンテナの出現以前に無数の貨車が操車場で入れ替えられていたことを知らない。
たとえばさいたま副都心、スーパーアリーナのあたり。
かつては操車場があり、北から電気機関車に引かれてきた貨車が蒸気機関車に組み合えられ、新たな編成の一部となって別の電気機関車に引かれ南に旅立った。
貨車とは? という世代もいよう。貨車とは運ぶものに合わせて作られた車両で、タンク車などは現在も活躍している。
ほかに冷蔵車、無蓋車、家畜車、編成の最後にくる車掌車もあった。多様性の極みだ。
次の画像は群馬県上信電鉄のとある駅にあった貨車(撮影:著者)。
これなどはコンテナに向かう途上のつくりという趣で、なかにほどんどなんでも積める。
やがてコンテナの時代が来た。
個々の個性的な貨車が家畜車のように自然に対し具体的に密着しようという創造行為の産物であったのに対し、コンテナの中身はさっぱりわからない。
どのコンテナも複製アートのよう。抽象の度合が加速する。
そしてコンテナ船は今日もこぼれんばかりのコンテナを満載し港を出入りする。
その日、金谷から山道の麓の茶店にタクシー。
そこから旧東海道に入ろうと、店で道を確認すると、連日の雨で裏手の道からは登れないという。
約40分遠回りし、旧東海道に入る。まずは上りの急勾配。
少し登っては休み、登っては休み。
やがて道は平坦になり、一安心し、風に吹かれていると、西行の歌碑に至った。
西行が高齢をおして東国への旅に出た時の歌。
遥か遠くに浜松のアクトタワーが見え、あとは茶畑。
さらに進むと、今度は芭蕉の句碑。芭蕉は西行の旅を模倣。
しかし同じ地を文字にして新たな認識を創造。
とかくするうちに、道は急な下り坂。
日坂の宿に到着。
高低差の中、歌碑や句碑を堪能しての三時間の歩行。
芭蕉は馬に跨っていた様子だが。
2019年早春、静岡県静岡市で現代美術を歴史化するかの企画展が二つ並んだ。
ひとつは静岡駅前の交通至便の極み、静岡市美術館の1980年代を俯瞰する企画(「起点しての80年代」)。
1980年代があって21世紀の今がある、あるいは今は1980年代をとっくに凌駕しているという議論。
これに静岡県立美術館の1968年のアートに焦点を当てた企画展(「1968年 激動の時代の芸術」)を加えると、1968年、1980年代、今の三つの時が絡み合う。
アートの世界に見る新旧論争的な語彙で語れる状況(『創造と模倣』84頁「古くからあるアポリア」参照)を、東京から、名古屋から1時間のところで理解できる。
先日、名古屋・静岡に販促営業で伺いました。
出版点数わずか3点という小出版社の突然の訪問となりましたが、真摯に対応をしていただき、また多くのアドバイスもいただきました。感謝いたします。
名古屋・中京大学の栂正行先生の書かれた『引用と借景』は下記の書店さまに置いていただいてます。
ぜひ、ご覧になってください。
*もし、売り切れていたらごめんなさい。店頭にてご注文ください。
【名古屋・駅前】
●三省堂書店名古屋本店
●ジュンク堂書店名古屋店
【名古屋・栄付近】
●ジュンク堂書店 名古屋栄店
●丸善名古屋本店
●ジュンク堂書店ロフト名古屋店
【名古屋・千種】
●ちくさ正文館書店本店
【静岡】
●戸田書店静岡本店
『引用と借景』出版から、無意識的ですら、この二つの用語の網の目を通してアートを眺め続けている。
いつまで続くことか。
しかし本来、用語と作品はイタチごっこの関係にあり、用語が作品をとらえる、作品が用語の手をいともたやすくすり抜ける、この繰り返しだ。
文化庁新進芸術家海外研修制度50周年記念展のポスターを目にし、引用も借景もふんだんに見つかろうと、さて、会場に入るや、心地よくも用語を忘れることができた。
今井信吾「裸婦座像」、斎藤研「風景」、遠藤彰子「明日」、安達博文「ドローン」、山内和則「室内」、石黒賢一郎「SHAFT TOWER」、金子亭「春の暮」、大場再生「花火のような記憶」、元田久治「Foresight・Shibuya Center Town」、そして川村悦子「黄いろい花」。
またしても川村の文章を読み込んでしまう。
『わたしを離さないで』の主人公キャシーとその寄宿学校の生徒たちならいざ知らず、高齢になっても手放せず箱にしまいっぱなしというモノがある。
キャシーたちが閉ざされた空間の中、モノを箱に大事にしまいこんでおくというのはよくわかるが、むかし旅した土地の絵葉書が衣更えの折などに、中身の分からぬ箱から突然出てきて、しばらくはその旅の行程すら思い起こせないというのが多くの人々の経験ではなかろうか。
この鮮やかな赤いカードは、ロンドン、ソーホーにある大書店フォイルズの無料の絵葉書。
イギリスの書店の内部は、さまざまな色の本が平済みにされカラフルなキルトのよう。
ポスター、ポストカード、講演会案内、バーゲンの案内とすべてけばけばしいものの、それも寒い国ならではのこと、全体としてはバランスがよく取れている。
伊賀上野は芭蕉の生誕地。
生家、菩提寺、記念館、そして蓑虫庵と芭蕉縁の場はいくつもある。
芭蕉は四十歳台に大きな旅をいくつもした。
大阪で「旅に病ん」だ時の目的地は長崎であったともいう。
ところで、「引用と借景の旅」のための画像にキャプションを付しているうちに、もしや俳句というのは土地土地の自然に付されたキャプションのように思えてきた。
ことば以前に自然の風景がある。その風景にことばをあててみる。
そのようなことを俳人はしているのではないかと。
(2017年7月中旬|三重県伊賀市)
2015年12月19日、「赤旗」の[ひと]欄に山本伸先生と『琉神マブヤーでーじ読本』登場!
ウチナー(沖縄)の哲学がマブヤーに込められている、とご紹介いただきました。ありがとうございます。
一部を抜粋させていただきます。
「琉神(りゅうじん)マブヤー」の解説本を執筆 山本伸さん
「 底流にあるのは「命どぅ宝(命こそ大切な宝物)」の心。先祖から継承されてきた伝統的な死生観や価値観、それに悲惨な沖縄戦の歴史がチャンプルーされ生み出された「ウチナー(沖縄)哲学」がマブヤーのストーリーにちりばめられていると解き明かします。
「世の中変えるのはなかなか難しいけれど、足元から平和をつくっていくためにも、マブヤーに込められた沖縄の精神は大いに参考になると思いますよ」。柔和な笑顔からマブヤー、そして沖縄への熱い思いがあふれます。」
月刊「地方自治職員研修」2015年11月号に『琉神マブヤーでーじ読本』の記事が掲載されました。
地方の文化をよく知ること、地方自治に必要なことなのかもしれません。ご紹介、ありがとうございます。
沖縄のローカルヒーローの「でーじ」な魅力
琉神マブヤーでーじ読本
ヒーローソフィカル沖縄文化論2008年から放送が始まり、沖縄で「でーじ」(すごい、大変、超などの意)な人気を誇るローカル・ヒーロー番組『琉神マブヤー』。劇場版映画を含めこれまで全7作品が製作され、今秋には新シリーズが放送される。本書では、沖縄の人々の伝統的な価値観や習俗を司る「マブイ(魂)ストーン」を、これを奪おうとする敵の「マジムン(魔物)軍団」から守るためにたたかうマブヤーを、全シリーズにわたって徹底解説。本土復帰前夜を舞台にするシリーズなど、沖縄の歴史・政治にも目を向け、伝える作品の奥深さに魅せられる。
中日新聞2015年11月28日夕刊「ゆうかんさろん」に『琉神マブヤーでーじ読本』の著者、山本伸先生が登場!
「キャラ通じ沖縄知って」
三重県四日市市の四日市大環境情報学部教授の山本伸さん(五三)=同市滝川町=が、沖縄のご当地ヒーロー番組を考察した「龍神マブヤーでーじ読本」を執筆した。専門のカリブ文学とは異なる分野だが、「沖縄の文化がちりばめられた物語を解説できた」と胸を張る。
多様な文化が絡み合う地域の奥深さに引かれ、カリブ文学の研究を始めた。沖縄国際大でも非常勤講師を務めており、「沖縄の気候や気質はカリブに近いと感じる」という。
二〇〇八年にテレビで放映された琉神マブヤーが、学生を含む幅広い世代の沖縄県民に支持されたのに驚き学会で報告。これがきっかけで執筆依頼を受け、七シリーズを一話ずつ解説する意欲作を書き上げた。
「理解できれば、大人でも楽しめる作品。かつて日本のどこにでもあった互助の精神が息づく沖縄文化を、マブヤーを通じて知ってほしい」と願う。
(中日新聞2015年11月28日夕刊「ゆうかんさろん」より)
東京神保町・書泉グランデさんにも置いていただいている『琉神マブヤーでーじ読本』。
10月3日に沖縄RBCで始まる新番組『琉神マブヤー5』の告知と一緒に宣伝ポスターを貼っていただきました(^^)/ 小林さま、ありがとうございます!
月刊「ホビージャパン」2015年10月号に『琉神マブヤーでーじ読本』の書評が掲載されました! ありがとうございます。
ちなみに「ホビージャパン」2015年10月号の巻頭特集は「ガンダムSEED VS ガンダムビルドファイターズ炎トライ」ですよ〜。詳しくは下記リンクにて。
『琉神マブヤーでーじ読本』出版記念トークイベント第2弾、
8月23日(日)、沖縄・那覇のジュンク堂書店那覇店さんにて15時より開催しました。
台風15号が接近するなかでも無事に開催することができました。
雨のなか、お集まり下さったお客様、ありがとうございました。
また、イベントの準備をしていただいた書店の皆様にお礼申しあげます。
そしてゲストでトークいただきました椎名ユリアさん(『2』〜、マングーチュ役)、棚原里帆さん(『1972レジェンド』クイナ役)に感謝いたします。
本年10月からの『5(イチチ)』の放映も楽しみですね。
イベントの様子は下記をご覧ください。
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『焼岳小屋・小屋開け小屋締め』が「山の本」2014年秋号 No.89(白山書房)に書影とともに紹介されました。掲載誌もお送りいただき、ありがとうございます。
北アルプス焼岳を望む峠にある小屋の、春の小屋開けと初冬の小屋締めの様子を写真に収めた。五月初め、冬の凍結と雪崩による破損を避けるため外されていた梯子の橋を架けることから始まり、除雪、荷揚げ、水回りの点検、布団の整頓などを終えて登山者を迎える。十一月初旬、雪が吹き込まないよう、また、雪に潰されないように小屋を締め、帰りに前述の橋を撤去して翌春を待つ。これは小屋の記録でもある。
(「山の本」2014年秋号より)
神保町・書泉グランデさん5Fレジ前で夏山フェア展開中です(2014年6月26日現在)。
夏山のガイドムック、雑誌、書籍など、網羅されてますよ。
梅雨が明ければ、夏山の季節ですね〜今のうちに計画をじっくり練りましょう!
7月には長野県の山フェアもあるとのこと。すばらしい。ぜひ足を運んでくださいね。
もちろん、『焼岳小屋・小屋開け小屋締め』もありますよ。
POPと特製ポストカードを付けてもらいました。
なんと白山書房さんの「山の本」のお隣とは! 光栄です、その光でブロッケン現象が起こってしまうぐらいです⋯⋯書影が光ってしまいました(^_^; 次は表紙にマットPPかけたいです。
カードは枚数が少ないので、お早めに!(レジの方にお声がけください。すでにカード在庫がなくなってましたら、ごめんなさいm(_ _)m)